
米雇用統計の「雇用者数」と「失業率」は別の調査|6万世帯と11.9万事業所の違い
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米国の雇用統計で必ず並ぶ2つの数字、非農業部門雇用者数と失業率は、同じ日に同じ資料で発表されますが、元になっている調査は別々です。米労働統計局(BLS)の解説によると、失業率は約6万世帯に聞く家計調査、雇用者数は約11万9,000の企業・政府機関から集める事業所調査から出ています。
投資信託のつみたてを続けていると、米国株の基準価額や為替のニュースで「雇用統計」という言葉を目にする機会が増えます。私も最初は、雇用者数が増えたのに失業率も上がった、という見出しを見て首をかしげました。片方の数字がもう片方の答え合わせになっている、と思い込んでいたからです。今回は、その思い込みをほどく順番で並べます。
雇用者数と失業率は、どの調査から出ている?
答えは、2つの別の調査です。BLSの解説ページでは、家計調査を Current Population Survey(CPS)、事業所調査を Current Employment Statistics(CES)と呼んでいます。毎月の発表資料「Employment Situation」は、この2つをまとめて1本にしたものです。
| 項目 | 家計調査(CPS) | 事業所調査(CES) |
|---|---|---|
| 主に出てくる数字 | 失業率 | 非農業部門雇用者数 |
| 聞く相手 | 約6万世帯 | 約11万9,000の企業・政府機関 |
| 拠点の数 | - | 約62万2,000か所 |
| 数える単位 | 人 | 仕事(給与が出ているポスト) |
| 月次変化の誤差の目安(90%信頼水準) | ±65万人 | ±12万2,000人 |
出典:U.S. Bureau of Labor Statistics「Comparing employment from the BLS household and payroll surveys」

家計調査は、世帯に「先週、仕事をしていましたか」と尋ねるやり方です。働く意思があって仕事を探している人も数えられるので、失業率を計算できます。事業所調査は、会社や役所の給与台帳から人数を集めます。こちらは仕事を探している人を数えられないので、失業率は出てきません。
「人」を数えるか、「仕事」を数えるか
いちばん大きな違いは、数える単位です。家計調査は人を数えるので、平日は会社員、週末は別の店で働く人も「1人の就業者」です。事業所調査は仕事を数えるので、同じ人が2つの勤め先から給与を受け取っていれば「2つの雇用」として入ります。
たとえば、ある月に副業を始める人が増えたとします。家計調査では就業者の数は変わりません。事業所調査では、新しく生まれた仕事の分だけ雇用者数が増えます。どちらかが間違っているわけではなく、測っているものが違うのです。
投信で言えば、口座の数と保有している人の数の違いに似ています。1人が2つの証券会社でNISA以外の口座を持てば口座は2つ、人は1人です。どちらの数字も正しく、目的によって使い分けます。
対象に入る人、入らない人
2つ目の違いは、数える範囲です。BLSの解説では、家計調査に含まれて事業所調査に含まれない人として、次の5つの区分が挙げられています。

- 農業で働く人:事業所調査は「非農業部門」なので外れます(林業の伐採だけは事業所調査にも入ります)。
- 法人化していない自営業の人:給与台帳に載らないため、事業所調査には出てきません。
- 無給で家業を手伝う家族:家計調査では就業者に数えます。
- 個人の家庭に雇われている人:家事代行などで家庭に直接雇われている人です。
- 無給の休暇中の人:家計調査では仕事を持つ人として数えます。
逆の例もあります。給与が出ている一時帰休の人は、事業所調査には含まれます。一方、調査週のあいだずっと一時帰休していた人は、給与が出ていても家計調査では就業者に入りません。範囲が少しずつずれているので、2つの数字がぴったり同じ方向に動く理由はないのです。
誤差の幅は5倍以上違う
3つ目の違いは、1か月の変化をどこまで信じてよいかです。BLSは、月次変化が統計的に意味を持つ目安として、90%信頼水準で事業所調査は±12万2,000人、家計調査は±65万人と示しています。65万を12万2,000で割ると約5.3倍です。

家計調査は6万世帯という限られた数から全米を推計するので、1か月の動きには揺れが出やすくなります。事業所調査は聞く相手が多く、さらに毎年、失業保険の納付記録という全数に近いデータで水準を合わせ直しています(BLSはこれをベンチマークと呼んでいます)。月ごとの雇用の増減を見るなら、事業所調査の数字のほうが精度が高い、というのがBLSの説明です。
ですから、雇用者数が20万人増えた月に、家計調査の就業者が10万人減っていても、それだけで「どちらかがおかしい」とは言えません。家計調査の±65万人という幅の中に、十分おさまる差だからです。
発表の日に見る順番は?
ここまでを踏まえると、雇用統計の日に数字を見る順番は次のようになります。

- 雇用者数の増減:事業所調査の数字です。前月分・前々月分の改定値も同じ資料に並ぶので、合わせて見ます。
- 失業率:家計調査の数字です。0.1ポイントの上下は誤差の幅に入りやすいので、数か月の流れで見ます。
- 2つの向きが食い違ったとき:副業の増減、自営業の増減、農業の季節要因など、範囲の違いで説明できないかを考えます。
私が意識しているのは、片方の数字でもう片方を否定しないことです。2つの調査は、同じ労働市場を別の窓からのぞいていると考えると、食い違う月があっても落ち着いて読めます。
次へ進む前に確かめたい3つのこと
- 調査の名前:失業率は家計調査(約6万世帯)、雇用者数は事業所調査(約11万9,000の企業・政府機関)だと言えますか。
- 数える単位:副業をしている人が、家計調査では1人、事業所調査では2つの仕事になる理由を説明できますか。
- 誤差の幅:家計調査の月次変化は±65万人まで揺れうる、と覚えていますか。
指標の発表直後は為替が大きく動きやすく、FXでは注文が思った価格で成立しないこともあります。数字の読み方を知ることは、取引を急ぐ理由にはなりません。まずは背景を知る材料として、落ち着いて眺めるところから始めるのが無理のない順番です。
よくある質問
この記事は経済統計の読み方に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引や会社を推奨するものではありません。FXは為替相場の変動により損失が生じるおそれがあり、預けた証拠金を上回る損失が生じることもあります(元本が保証される商品ではありません)。掲載した数値は2026年10月6日時点で米労働統計局(BLS)・金融庁の公式サイトに掲載されていた内容にもとづいており、調査の設計や数値は改定されることがあります。最新の情報は公式サイトで必ずご確認ください。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。本サイトはアフィリエイト広告(成果報酬型広告)を利用しています。